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Episode1:声無き声 [ShortStory.]

 この時間はあまり好きではない。

 全ての時間が止まり、この世界に孤独を突きつけるから——。


 この時間は好きではない。

 今まで誰一人出会った事が無いから——。


 この時間は嫌いだ。

 自分の中にある欠けたものが取り戻せるから——。



 〜Episode1:声無き声〜


 ——2009年4月6日23時55分、巌戸台駅——


 自分が電車を乗り継ぐのは何回目だろうか? そんな他愛も無い事を考えながら彼は雑踏を避け、歩き続けた。

 彼が前に住んでいた町は深夜近くにもなれば殆ど人もいなくなり、最終電車が出る時間帯だった。ふと、右腕に付けている腕時計を目にする。本来であれば三時間以上前に目的地に着くというのに、電車のダイヤの乱れから後少しで日が変わるまでかかってしまった。

 音も無く溜息を付く。どうがんばろうと後五分で目的地に着いて就寝する事など出来やしない。既に荷物は送っていると言え、それでも持っていく物はそれなりにあった。だから手間をかけたくないのと、深夜という時間帯に良い思いは無かったから。

 耳を突くような雑踏、明らかに中学生と分かる少年少女の笑い声。果ては談笑の中から図工、算数などの言葉が聞こえてくる。

 理由はあってもそんな事を知らない、傍から見れば自分自身も彼らと同じように見られる他者からの目。何もかもが嫌になる。自意識過剰かも知れないが、誰かからの視線ほど怖いものは無い。いや、人の心ほど怖いものは無い。だからといって何もしない訳にもいかず、すぐ変わり果てる事が分かっている街中をただ歩く事にした。



 ——2009年6月6日23時59分、街中——


 この中の何人が知っているんだろうか? 後一分もしない内に何もかもが変貌してしまう事を。前に住んでいた町では誰も知る事が無かった。その証拠に半年ほど町を歩き回ったものの、誰一人として遭遇しなかったから。

 諦めた雰囲気を持つ彼がもう一度ため息をつくと同時に、時の針が全て重なり合った。

 生温い感覚と共に空は毒々しい色に変わり、地面は血塗れになる。人という個体はそこには存在せず、かつて人と呼ばれたものは全て棺に変わり果てる。

「また、か……」

 彼は誰もいなくなった町でただ一人、溜息交じりの言葉を吐く。この時間帯は電気も、機械も全く反応しなくなる。人も全て別の物、棺桶に変わり果てる。そしてこの時間帯を他の人は覚えている事は無い。そんな不思議な時間帯。彼はこの奇妙な時間帯を適当に『25時』と呼んでいる。本来出来ない話だが、『25時』だから出来る事が一つだけあった。

「……ま、とりあえず歩きますか」

 ここで誰かが乗っていたのだろう原付を奪って目的地まで着くのは容易な事かも知れない。もっとも、免許も無ければ無免許運転の経験も無いので無理だったが。人混み、いや、棺混みの中を掻き分けながらどうにか交差点を超えて行く。

 困った事だが、タイミングによっては棺同士が密着して大きく遠回りしないと歩く事が出来ない事もある。幸い、今回はそれなりに人通りもある程度余裕があったのでどうにかなっているが。

「……しまった」

 肩にかけている鞄が棺桶によって引っかかってしまった。このままではまた遠回りしなくてはならなくなる。ならば答えは一つだった。

「ふん!」

 強引に鞄を引っ張り出して彼は振り返る事無くまた歩き続けた。後ろで棺が倒れる盛大な大きな音がしたが、それに振り返ることなく、気にする事はしなかった。



 ——2009年6月7日、『25時』57分、巌戸台分寮前——


 何回か棺を倒してしまうハプニングに見舞われたが、それを諸共せず歩き続け、どうにか目的地に辿り着いた。どうせ誰かが転んで何人か倒れたと他の人は認識をするから。仮にこの時間帯で何かを起こしても、それは全て他の人は都合の良い様に記憶される。

 例えば、この時間帯で棺を別の場所に動かしたとする。そうすれば通常の時間帯になった時には、動かした人にとって理由はどうであれ少し前から動いた場所に向かって歩いたと認識する。また、周りの人間もそれに基づいて自然な認識をする。やろうと思えばどんな犯罪でも出来なくはない。機械を使わない事、という今の世の中を考えると限りなく限られた事しか出来ないが。

 そんなどうでもいい事を考え、時が戻るまで入り口で待ってようとしている彼に、この時間で初めて聞く音がやって来た。

「——もしもし?」

 足の筋肉が突然弛緩し、転びそうになる。ハッキリ言って心臓に悪い。彼が日常から聞く音だけど、この時間帯に聞く事は一回も無かった。

「もしもし、少しよろしいですか?」

「……自分ですか?」

「はい、貴方以外誰がいるのですか?」

 そりゃそうだと彼が心の中で思い、目の前の少女にではなく、自分自身に対して苦笑してしまう。

 彼女は外国人だろうか? ブロンドのショートカットが闇の中で映え、幻想的な感覚に見舞われる。
 いや、むしろ彼女の第一印象は『人形』だった。子どもの頃よくいる近所の女の子達の遊びを見た事がある。その遊びの中で出てくるような人形に見えてしまう。それに、まだ春先だというのにノースリーブの服装は、見ているこちらが寒くなる。

「貴方にこれを……」

「これは?」

「単なる署名です。この寮に入る為に必要な物と考えてください」

 彼女は一冊の赤い表紙のノートを取り出し、その中で一つのページを開いた。そこには既に誰かが書いたのか、名前が三人分だけあった。


 藤堂 尚也
 周防 達哉
 ×海 ××

 だが、最後の人間の名前にだけ何故か月日が経ち、鉄分と赤血球が取り残されたような赤い『何か』で大きくバツ印がされていた。。


 


「彼らは……?」

「お気になさらず。貴方は最後の彼の下に書いてくれるだけで大丈夫です」

 彼は名簿に何か不自然な事に気づいたが、あえて何も触れる事はしなかった。それよりもこの時間に始めて人間と遭遇する事の方が余程気になる。

「というかアンタはこの時間帯に……」

「それもお気になさらず」

 釈然としないながら、本人が気にするなという以上これ以上どうしようもない。生気を感じられない少女の瞳に気圧され、この時間帯に出会った事について問う事はしなかった。


 名簿には覚書としてこんな内容が書いてあった。



  ——我、自ら選び取りし、いかなる結末も受け入れん。



 これに関しては特に問題は無い。何故こんな事を寮に入るだけで書かなくてはならないのか、それは分からなかった。問題はその後に手書きと思われるやはり、どす黒いまでに赤く、かすれ気味の文字でこんな事が追加されていたのだ。



  ——我、大いなる力によって流れに導かれし場合の未来を受け入れん。



 『大いなる力』とは一体なんだろうか。まさか運命とか言うのか。そんなものは信じない性質だが、彼は名簿に自分の名前を記述する。


 白咲雄二


「——白咲、雄二様ですね?」

「なんだ、これから寮に入る人間の名前も覚えてないのか?」

 少女は艶っぽく笑う。手入れが施されているだろう唇からは、彼のあからさまに幼稚な質問に対して嘲笑を浮かべているようにも見えた。

「それでは、貴方のこれからの一年間、悔いの無い様——」

 その言葉を残して少女は立ち去った。そもそもこの寮の人間であるはずなのに何故立ち去る必要があるのか。それを思った時には既に走り出していた。結局雄二は少女の後を追ったものの、初めからこの世界にいなかったように少女はいなくなっていた。仕方なく寮の入り口に戻り、残り数秒となっていたこの時間とまた別れを告げた。

 もう何千回と続く生温い感覚と共に、雄二はまた元の人間がいる世界へ戻る。いつものように彼にあったあるものを24時間だけ奪い日常へ戻る。

 そして彼は目の前の建物へと足を運ぶ。これから一年間世話になる事となる場所へ——。

 彼は知る。自分自身に起こる不思議な現象とあの時間帯、先ほどの署名の真の意味を——。

オリss「チョコレートの中の戦争」 [ShortStory.]

時間無さ過ぎて泣いた。

足の筋肉痛がやばい。



オリ設定資料     よめよ


鳴海優也(高1)

その辺にいる典型的なエロゲーの主人公キャラ。

けどあんまもてない

料理好き

両親は中二の時に音信不通

雄二を哀れに思う

澪音すみれ(高1)

元気一杯、天真爛漫、超能天気

三拍子揃った娘。

いわゆる"殺人料理"のスキルを持って居る。


桐条郁乃(高1)

湊とすみれの保護者。
1番の苦労人
ちょっとツンデレ

桐条財閥の二女。でも倹約家


有里湊(高1)

容姿淡麗、頭脳明晰、文武両道
三拍子揃った奴

ネタによって性格を変える

たまに普通
たまに変態どS

次期生徒会長


桐条南凪(高2)

桐条財閥の長女で
現生徒会長

なんでもできる
なんでもできる

大事なことなのでry

でも湊を凌ぐどS

女王様ばんざい!!


真村結城(高2)

苦労人
どM
苦労人
グリーンリバーライトは正義
苦労人
受けの中の受け
はい

南凪に飼われている

城咲雄二(中二)

桐条寮に預けられた中学生。
おかしい寮生徒に頭を悩ます

南凪に色々吹き込まれて居る

すみれが好ry


優也:自宅で一人暮らし

それ以外:桐条財閥の経営する"桐条寮"で生活


始まるよ!!

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焔  SS [ShortStory.]

「きゃっ…」

彼女は走っていた。自分が生まれ育った村から逃げるように。

「でもこのままじゃ…村が…男達が…」

隣を走る義妹が呟く。
その通り。彼女の背後遠くで炎々と燃え盛っているのは彼女の生まれ故郷。

「だからなおさら生き延びなくちゃいけない!」
「逃げ延びて、生き延びるんだ!生きてさえいれば、いつか必ず…」

その瞬間、彼女の腹に激痛が走る。

耐えられない痛みに襲われ、彼女は地面に倒れ伏す。

「義姉さん!」

義妹の呼ぶ声が最後に聞こえた。
そして彼女の意識は昏い闇の中へと溶けていく―



死亡オチ(じゃないよ)


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朝と夜の物語  SS [ShortStory.]

「朝と夜の狭間を廻る幾億の《焔》…」
「僕(イヴェール)は問う 生まれて来る意味を…」
「僕(イヴェール)は問う 死んで行く意味を…」
「僕(イヴェール)は生も死も持たぬ存在…」

男の両手には紫と青の双子の人形

彼は語りかける


「紫の姫君ヴィオレット…

青の姫君オルタンス…」

二人の姫君が目を覚ます

「「ボンジュール ムシュー・イヴェール」」

「我らに

生と 死を

約束せし人形…」

人形の名は

菫姫(ヴィオレット)…

紫陽花姫(オルタンス)…

「二人に問う

此処に物語は在るのだろうか・・・?


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P3虹 舞い落ちる火種 [ShortStory.]




 それは罪。

 それは罰。

 生きとし生ける者が生まれながらに背負っている原罪(Original Sin)。アダムとイヴが最初に犯した罪。

 誰も抗う事も、決して償う事の出来ない人間が背負うには重すぎる罪。

 それを――。

 彼は――。

 背負わなくてはならなかった。



 羽を休めた11の鳥はそれぞれの道を歩むはずだった。

 彼らは今再び――。



 閉ざされた鳥籠の中で飛ぼうとしていた――。




 ~予告編第一話:舞い堕ちる火種~

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